ぶらこぐま 自然をみれば面白い

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 毎月、無名山塾会員向けの連絡帳に「ぶらこぐま」を掲載しています。これは山の樹木や花、地形、地質など山のおもしろい自然について体験したことを書いたものです。表題はNHKの「ブラタモリ」のものをいただいたもので(一般的にパクったという)、掲載したものにカラー写真、図などを追加しました。

イギリス・アイルランドぶらぶら

アイルランドのダークスカイ

 湖水地方からハイウエイを飛ばして夕方、リバプールに到着した。翌日の夜、フェリーでアイルランドのダブリンに向かう予定だ。それまでの時間、今回の大きな目的、ビートルズの足跡を追った。デビュー当時のライブハウスのキャバーンクラブ、歌に出てくるペニーレインストロベリーフィールズ、メンバーの生家など、ゆかりの地を十分楽しんだ。
ビートルズはここから始まったキャバーンクラブ
ペニーレーン
ストロベリーフィールズ
 早朝、まだ真っ暗のダブリンに到着した。市街地を走り抜け島の南西のダークスカイで有名なケリー州に向かった。ちょっと前にNHKで放送された番組で世界一の星空が見られるところと紹介された地、暗くて星がよく見えるところである。日本の山の上だってと思うかもしれないけれど、結構都市の明かりが空に反射しているのが現実だ。アイルランドの何処へ行こうか?迷って決めたところだ。ちょうど10月の末、新月で暗く、かつハロウィンだった。
キラーニーの街まで車を走らせ、遅い昼食後、観光案内所で宿泊先を探すが上手いところがなかった。まあ、どっかあるよと、湖水地方と同じような氷河地形の山々を楽しみながら南のモールズギャップを超え、小さな村スネアムのパブに紹介されたB&Bに落ち着いた。
モールズギャップを越える道
パブで紹介してもらったB&B
 さすがダークスカイの地、夜は真っ暗だった。村の中心のレストランにまで夕食を食べに歩いて行くが、帰りの暗闇はヘッドランプを点灯しないと歩けなかった。そんな暗い夜、久しぶり、残念ながら雲が出てしまい星は顔を出してくれなかった。
村はハロウィンの準備でおおいそがし
 なかなか気持ちが良い宿だったので連泊して、翌日はケリー州の周遊道路を走った。緩やかな丘のような山々が連なる地形。海岸はフィヨルド的地形。森は全くなく灌木と草原が続く。そして羊。石の積まれた砦跡や潮の引いた海岸を歩いて島に渡ったりした。ちょっと寒々とした景色はアイルランドの歌手、エンヤの曲がピッタリのような気がした。うつむいた花のフクシア、紫が眩しいセイヨウアサツキ、おなじみフランスギク、ノコギリソウなど、こんなに寒いのに枯れた草の中に花が咲いていた。

アイリッシュブレックファースト
フクシアの花
フランスギク
砦跡
広い大地が続く
小さな島が多い氷河地形
今夜はハロウィン、ケルト人のお祭りここは本場なのだ。パブを訪ねれば生バンドが入り、変装した村人が楽しんでいた。最近の日本のように馬鹿騒ぎじゃないのがよかった。バンドは私たち日本人のためにビートルズの曲を3曲演奏してくれたのは嬉しかった。
本当はアイルランドは蕪で作ったそうです
さて、その日が終わってしまう頃、真っ暗な道を歩いて帰ると、空に雲はあるがだいぶ晴れてきてチラチラ星が見えた。3時に起きだし外を見れば星が瞬いていた。ラッキー、ちょっと雲はあったが、早朝の星空を楽しむことができた。
アイルランドの星
翌朝、宿の女将さんと羊飼いのご主人に見送られスネアムの村を後にした。途中、アイリッシュウイスキーの醸造所などに寄りながらダブリンを目指した。
ヤギも見送りに
ダブリンで1泊、夜のパブでおばあちゃんにアイリッシュダンスを褒められ、いい気になり、翌日、夜のフェリーでリバプールに戻った。
アイリッシュダンスをほめてくれたおばあちゃん酒飲み

イギリス・アイルランドぶらぶら

ピーターラビットと007

 ヨークをまだ暗い早朝に出発、グレートブリテン島の真ん中の西側にある山岳地帯、Lake District National Park に向かいました。この辺は湖水地方と呼ばれる地域で、スコットランド、ウエールズと並んで、イギリスの唯一の山岳地帯です。地図を見れば、山の標高は1000m以下ですが、谷は広く、湖が点在し、河に沿った細長い形をしているので、氷河によって作られたものとわかります。
 車を北西に走らせ、まずは湖水地方の中心地ウィンダミアに向かいました。最初は広い平坦な農村地帯を走りましたが、目的地が近づくにつれ、丘のようなまあるい山、広いU字谷が目立つようになりました。
   だいぶ郊外に出た
 ウィンダミアは結構大きな街、たくさんの人でごった返していました。ちょうどハロウィン前の休日で多くの家族連れが訪れているそうです。
 さあ、今日はどこに泊まろうか、情報を仕入れたけれどいいところがない。まずは目的としているピーターラビットを創作したビアトリクス・ポターの住んだヒルトップ付近まで行ってみることにしました。細い曲がりくねった田園地帯の道、周りはほとんどが羊の放牧地とちょっとした森が交互に続きます。途中、田園地帯のフットパスを歩く多くの人たちを見かけ、イギリスでのフットパスの盛んさを感じました。結局、この日はホークスヘッドのB&B(朝食付ゲストハウス)、パブの2階の部屋に落ち着きました。
 宿付きパブ ビールサーバー
 ヒルトップは丘陵の続く農村地帯です。ビアトリクス・ポターの住まいを見た後、付近をちょっと歩きました。日本でいう里山、この地では畑ではなく放牧地と森、その中に農家の建物が続き、まさしくピーターラビットの景色です。天気も良く気持ちよく歩けました。
  こんな素敵な朝
  ポターの住んだ家
ピーターラビットはこんな中で生まれた

 この日はウィンダミアのB&Bを決めて、午後から山岳地帯を車で西の海岸に抜けてみることにしました。広いU字谷沿いに続く細い林道を走りました。林道と言っても舗装はしてあります。周りの山には樹木はなく、荒涼とした風景、舞台はスコットランドだったけれどこの前の007の映画の舞台となった場所と同じようです。遠く山の稜線には歩いているトレッカーを所々で見ることができました。これが氷河の残した地形なのですね。植物の種類が少ないのも納得できました。
樹木は全くない草原の山
峠の標識 ランカシャー
峠を下りる
 翌日は北にあるケズィックからウォータンドラス周辺を歩こうと思っていたのですが、高い所に行くと冷たい雨となってしまいました。山中の駐車場で様子を見ていると、トレッカーが山を降りてきて、「今日は雨だからダメだね」の言葉、残念歩くのはあきらめることにしました。
ウォータンドラスに向かう途中
  ウォータンドラス
 ケズィックに戻り街を散策、ここは周囲を山に囲まれ、ちょうど日本での松本や大町のような街で、たくさんの登山用具店がありました。クライミング用品もたくさん売っており、聞けばこの辺りにはロッククライミングができる岩があるようです。イギリスの岳人はこの辺で鍛え、ヨーロッパアルプスやヒマラヤに向かったのだろうと思いました。
  アウトドア専門店
 クライミングギア専門店
 午後も遅くなる頃、後ろ髪を引かれながら、次の目的地リバプールを目指し、ハイウエイを飛ばしました。

こぐまイギリス・アイルランドを行く

イングランドに降り立って

 樹木で縁取りされた牧草地の上を飛行機は高度を下げた。羽田から15時間、飛行機は英国マンチェスター空港へ着陸した。ぼくの中では英国といえばビートルズ、中学時代から聴いている音楽でいまだもって大ファンである。
やっとマンチェスター上空までやってきた。 そして、もう一つ英国で気になっていることがある。日本と同じような島国の英国の全土の植物種は約1400種、一方、わが国の高尾山は約1538種、高尾山は英国全土より植物種数が多く生物多様性に優れていると言われている。この前の「ブラタモリ」でもやっていた。東京の緯度は約35度、ロンドンが約51度と緯度が大きく違うところを比べれば、当然緯度の高いところの方が植物種数を比べれば少ないのは当たり前の話、実際、英国の植生がどうなっているか一度見てみたいと思っていた。
 ちょうど、ぼくの娘が今年の5月にイングランドのヨークにあるヨーク大学の大学院に入学した。この時、ぼくは娘の所に行くことにかこつけてビートルズの誕生の地リバプールとイングランドの自然を見てくるかなと密かに思った。そんなことを蒼山会の昔からの仲間の高橋氏に話し行くことになった。 娘の住むヨーク、山岳地帯の湖水地方、リバプール、ロンドン、せっかくだからアイルランドも訪ねることで14日間の旅が決まった。彼は若い頃英国に生活していたので何とも心強い。
 マンチェスターでレンタカーを借り、ハイウエイをヨーク目指して走る。周りは緩いアップダウンのつづく牧草地、ヒツジが点々と草を食んでいるが、牛は全く見られないのが不思議だ。牧草地の中に所々荒れ地も点在する。どこまで行ってもそんな景観が続く。樹木は所々に低い灌木はられるものの、森というものがどこまで行っても現れないのは日本の景観と違うところだ。
空港周辺には森はあるようだ。これからお世話になるレンタカー たのむぜ! この辺はむかしむかし氷河に厚く覆われていたので土壌も栄養がなく植物の種類も少なかったそうだ。それに加え牧畜により樹木が失われこんな景観になったのだろう。放置された牧草地も貧栄養の土壌と高緯度の厳しい気候のため、樹木は育つことが難しく荒れ地になっているのだろう。日本の山でも一度植生が失われると元に戻すことは大変だ。英国の植物の種類が少ないのは氷河と人為的な影響、それと高緯度地方の厳しい気候なんだろうと理解できた。
森が現れない丘陵地が続くこんな景色が続きます。

 そんな景観もヨークの街に入ると一変した。中世前から作られた街、いたるところに樹木が植栽され、ちょうど紅葉の時期を迎えいい感じに色づいている。特にヨーク大学のキャンパスはすばらしい景観だ。小さな池、芝生、森、人間が作ったものだけれど、バランスのとれた心地よい景観だった。日本の大学ではとても考えられない。
大学の中は樹木がたくさんあるのびのびとしたキャンパス  樹木はカエデ類が多いが、日本のものとはちょっと違う。どちらかといえばカナダのサトウカエデのようだった。城壁、ヨークミンスター、鉄道博物館などを1日案内してもらいヨークの街を後にした。滞在は2晩、もちろんパブには行きました。
ブナが元気に育っていたナラ類かなヨークミンスターヨークミンスターのステンドグラス城壁を歩くこの中に猫がいますもちろんパブにも

大台ヶ原の森

 大台ヶ原の最高峰は標高1695mの日出ヶ岳です。ご存知のように日本百名山の一つとなっています。山容は穏やかな起伏の台地状で、周囲を急峻な崖で囲まれています。なだらかな地形が200万年ぐらい前から1000m以上隆起したそうです。この地形を隆起準平原と呼び、長い間侵食を受けずに残っているのはひじょうに珍しいそうです。
大台ヶ原の地形(カシミールの5mメッシュ標高で作成)
 2万年前頃の氷河期に大台ヶ原には、シラビソやトウヒなどの針葉樹が成育しました。その後の6000年前には温暖期に入り、シラビソはなくなりましたがトウヒは残ったそうです。これらの針葉樹は現在中部地方では標高1600m以上にあるものですが、氷河期の名残として大台ヶ原に残りました。現在、ここはトウヒの南限となっています。
 日出ヶ岳周辺の正木峠から正木ヶ原にかけて森らしきものは見当たりません。白い立ち枯れ白骨化した樹木が目立つのが現状です。
 1959年9月26日~27日に伊勢湾台風(台風15号)が紀伊半島に上陸し、日本を通過しました。この台風は三重、愛知、岐阜県を中心に甚大な被害を及ぼしたことはご存知の方が多いと思います。
 大台ヶ原はちょうど台風の進行方向の右側に入り、熊野灘から台風に向かって吹く風が直接当たりました。この風によりトウヒ林は大風害を受け、多くの樹木が枯れました。その後、この付近にはシカの頭数が増加し食害によりトウヒは被害を受けさらに立ち枯れが進みました。そして地上の樹木が枯れたことにより、土の表面に太陽の光が入るようになり、ササ(ミヤコザサ)が一面に成育して、次世代のトウヒが発芽、成育できなく、元の樹林は再生していないのが現在の状況です。
     正木ヶ原の状況
 大台ヶ原は本州でも最も雨量の多い所です。雨により、昔はトウヒの下に緑のコケが一面に覆う森だったそうです。現在の景観からは想像できません。